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甘く、深く、繋がって
第7章 失態
更に奥へと侵入を企む舌に思い切り噛み付いた。ガリッと鈍い音がして、黒田さんが身体を起こす。
「って……」
血の滲んだ口を拭って私を見下ろして。
「見かけに寄らず結構やるね」
私を写す眼差しに緋が灯った。
「俄然欲しくなってきた」
黒田さんの低く小さな呟きに身体の芯がゾクリと震える。
「でも、今日は止めておく」
黒田さんが笑顔で伝票を抜き取った。
「帰ろうか。オレ明日、午後から内勤。愉しみだね」
立ち上がった黒田さんから視線を背け、座ったまま鞄を手に取る。
「帰んないの?」
「あ、後から一人で帰ります。おいくらですか?」
お財布を出そうとして黒田さんの手に制される。
「オレと一緒に帰れない?……警戒してんの?」
フッと笑って目が細くなった。
「良いねぇ。食事代はいらない。仕事急に手伝ってもらったお礼。オレに払わせて」
笑ったままの黒田さん。その笑みは一見爽やかだけど、下にはゾロリと欲が蠢いているようで、背筋が凍えた。
「あ、タクシー代」
そう言って鞄を開きかけたのを、今度は私が制した。
「お食事代を出していただいただけで充分ですから」
「そう?気をつけてね」
黒田さんは最後まで笑顔で離れて行った。
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