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五十嵐さくらの憂鬱。
第12章 …12
「あっ…」

その後は声が出せなくなった。
2人で激しく求め合うキスをし
樹のピストンが深く、早くなる。

「さくら、その顔もっと見せて」

苦しい。
愛おしすぎて、苦しい。

さくらは樹を求め、
樹もさくらを求めて
2人で深く深く、果てた。

「…っは、はぁ、はぁ…」

さくらの腹に白濁した液を出すと
息を切らせた樹が酸素を求めて肩を揺らした。
さくらは脚を床に放り投げ
樹の肩に腕を回した。

「先輩…好き…」

さくらは、こんなに愛しい気持ちが
自分の中に芽生えるとは思わなかった。
優しく、意地悪で
さくらを想ってくれる樹。
幸せすぎて、さくらは涙が出そうになって
ぎゅっと目をつぶって樹を感じた。

「先輩、大好き…側にいて…」
「うん…」

キスが甘いとは、よく言ったものだ。
本当に、樹のキスは甘い。
流し込まれる唾液で喉を潤し
息切れする樹に、自分の唾液を乗せた舌を入れれば
樹はそれを一つ残さず吸いつくす。

「…立てる?」

しばらくキスを味わってから
樹がポツリとさくらに話しかけた。

立てると思ったのだが
予想以上に脚に力が入らず
さくらは椅子からそのまま床に座り込んだ。

「あ…こんなこと…」
「しばらく立てなさそうだね。
俺も、疲れた…」

樹もさくらの隣に座り込み
2人で肩を並べて寄せ合った。
樹はさくらの頭を自分の肩へ乗せて優しく撫でる。
疲れすぎたせいか、眠気がひどかった。

「このまま、うち来る?」

樹の一言で、さくらは初めて授業をサボった。
並んで歩いてバスに乗り
樹のマンションに転がり込むと
玄関で熱いキスをする。

そのまま布団に倒れこみ
キスをしながら樹が服を脱いでゆく。

まだ明るい日差しが差し込む室内に
樹の引き締まった肉体が官能的だった。
筋肉が浮く二の腕に抱かれ
服をどんどん脱がされていく。

なにも考えることはなく
なにも考えられなかった。

樹の指がさくらを焦らし
さくらの声が、仕草が樹を焦らした。

真っ白なシーツの上で
2人は裸でお互いを求めあい
惹かれあって
絡まり合った。

素肌と素肌が触れ合うことが最高に気持ち良い。
うっすらと汗をかけば
2人の身体はよりいっそうくっつきあった。

濡れそぼるさくらの中で樹が快感をかきむしり
さくらは頭が真っ白になり
身体が言うことを聞かなくなるという絶頂を
数回繰り返した。
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