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五十嵐さくらの憂鬱。
第12章 …12
一緒にお風呂に入るのをさくらは嫌がった。
恥ずかしいからと頑なに断られたため
樹はしぶしぶ承諾した。
いつか、必ず一緒に入って
風呂場でさくらに相当意地悪することを
誰にともなく誓った。

濡れた髪を拭きながらでてきたさくらは
化粧をしていないせいか
いつもより若干、子供っぽい。

「出た? ドライヤーはそこだから」

樹はさくらの額にキスをして
風呂場へと向かった。

綺麗に身体中を洗い流し
熱めのシャワーを肩からかけた。

樹は女の子を泊めるということはほとんどない。
彼女と思う人間は泊めていたが
それもそのうちなくなり
いつしか、やることを済ませたら送って行くというのが
当たり前になっていた。

さくらが樹のマンションに泊まるのは
数回目になる。
その度にさくらは新しい反応をして楽しい。

樹が風呂からあがるのを懸命に待っていたのだろう。
テレビのチャンネルを握りしめたまま
さくらはソファですやすやと寝息を立てていた。

抱き寄せると目を覚ます。
大きなあくびをした時に
ぐい、と持ち上げてお姫様だっこする。

「わ、先輩…重いです!」
「そうでもないぞ。
もう少し太ってもいい」

じゃれあいながら布団へと潜り込み
甘い夜が更けて行った。
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