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五十嵐さくらの憂鬱。
第14章 …14
修を見つけたのは、午後一の授業の時。
小春はちょうど授業がなかったので
フラフラと歩いていた。
ベンチでのんびり読書をする修は
まるでマネキンみたいだった。

「こーんにちは」

小春が覗き込むように見ると
修はゆっくりと顔を上げる。

「ああ、やあ」

まるで棒読み。
小春は苦笑した。

「今度は何を読んでいるんですか?」

修は表紙を見せる。
現代小説のようだった。

「面白いですか?」
「うん。面白いよ。授業は?」
「今の時間はないです。だから、これからさくらとお茶しようと思って」
「樹の、彼女か」

うんうん、と小春はうなづく。

「この間、図書館で具合悪そうにしてたけど
大丈夫かな?」
「え? さくらが具合悪くなることなんてないですよ?
中学高校と、皆勤賞ですから!
まぁ、いつも憂鬱げな顔はしてますけどね」

修は首を傾げた。
この間は、ずいぶんと顔も赤かったしな、と思い出す。

「まあいいや、よろしく伝えて」
「はい!あ、先輩も一緒に行きませんか?」

小春の申し出にしばしためらってから
修は本をとじた。

「じゃあ、行こうかな」

というわけで
いつもの小春の席の隣に修がいる。
さくらは唖然とし、気まずさから眉根を寄せた。

「さーくーら!何その顔!」
「いや…だって…なんで…」
「誘ったらきてくれたのよ! いいじゃない、別に」

どうも、とさくらは軽く会釈する。
修は掴み所がなくて困る。
しかも、図書館でのあれを見られているので
さくらはとても複雑な気分だった。

修が携帯鳴ってると言ったのは
バイブの音だし
苦しさと気持ちよさから
さくらは自分がわけのわからない態度をとったのも覚えていた。

「具合、大丈夫?」
「…大丈夫です。この間はすみませんでした」

修はじっとさくらを見て
大丈夫ならよかったとうっすら微笑んだ。
それを見ていた小春の顔が真っ赤になるのをさくらは見逃さなかった。

ーーーはぁ、もうどうしようーーー

さくらだけが気まずいまま
こくこくと時間だけがすぎていく。
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