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五十嵐さくらの憂鬱。
第7章 …7
これはもう、拷問に近い。
樹は噛み跡を見てそう思った。

「まさか、こっちも…」

樹は嫌がるさくらにおかまいなしに
ブラのホックを外して隠そうとする腕をどけた。

「ひどいな…」

胸を集中的にいたぶられたのか
真っ赤になり、
歯型が幾重にも重なって
血が滲んでいる。

「これじゃまるで…」
「でも、先輩」

さくらは胸を隠して、ポツリと話し始める。

「でもね、先輩。光輝、とっても楽しそうだった。
もちろん、私はイかなかったけど…
あんな楽しそうな光輝久しぶりだった…」

さくらの肩口の歯型に触れると
痛そうに眉をしかめた。

「痛みも、快楽に変わるかな…もっと、私が頑張れば…」
「もういい」

樹はさくらを抱きしめた。

「もういい、さくら。充分頑張った」
「痛いのは嫌だ…でも、光輝がそれを望むなら…」
「さくら、しっかりしろ!」

樹の初めての大きな声に
さくらは驚いた。
いつも冷静な樹が、悲痛な顔をしていた。

「こんなの、恋人の域を超えてる。
嫌なら、嫌だと伝えなければ
彼はもっとエスカレートするぞ。
そうなったら、さくらの身体はボロボロになる…
俺は、そんなのは、そんなのは耐えられない…」

樹はさくらを強く抱きしめようとして
加減した。
服がこすれて痛いだろうと、
強く抱きしめたら壊れるだろうと
それを危惧した。

「もう無理だよ、さくら。
これ以上、さくらを傷つける彼氏を俺は許せないし
傷つくさくらも見ていられない…」

そう言ってさくらを抱きしめる腕に力が入った。

「先輩、大丈夫…。
もっと、もっと私を感じる身体に変えて?
そうしたら、痛いのだって平気になる気がするの」
「バカなこと言うなよ」
「私は至って真面目です…」
「無理だよ…」

樹は根負けした。
こんなことされても彼氏が好きなのか。

「さくら。こんなことされて嬉しい?」

言葉につまり、それでもさくらは考えた。

「嬉しくない。気持ち良くもない。
でも、嬉しそうな光輝見てると
私の我慢が足りないんじゃないかって」
「そんなこと、あるわけないだろ」
「じゃあ、どうしたら光輝とうまくいくの?
私が変わればいいって、先輩言ったじゃないですか!」
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