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妄想短編
第6章 天の先の国
そして、千夏が意識を手放そうとした時

『長谷部千夏』

どこからか女性の声が響いた

『千夏…』

とても綺麗で優しい声色

「誰?」

閉じかけた瞼をゆっくりと開き辺りを見渡す千夏

『貴方は、まだそちらへ行ってはなりません…貴方は……人生に未練は無いのですか?』

「未練…?」



[あ…明日は大好きな漫画の発売日だった、来週の休みは親友の友理奈と一花と遊ぶ約束してたっけ…そう言えば、一花に彼氏が出来たお祝いをするって……あ…もう戻れないんだ…私は、家族にも会えない、友達とも遊べない、もう恋愛だって結婚だって出来ないんだ…。友達といっぱい遊んで、大好きな人と結婚して子供ができて、死ぬときは子供や孫に見守られながら……そうやって当たり前のように過ごしてくって………そう思ってた。]

千夏は顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら声の主に叫ぶように返事をする

「ズズッ未練あるよ!!!無いわけないじゃん!!!ズッ
だって!だって!まだ19年しか生きてないんだよ?!私だって!恋愛したり結婚したりママになったりしたいよ!!!なのに!なんで?なんで?殺されなきゃなんないの?私何もしてないのに!なんであんな死に方!!………うぅ……」

涙が止まらない
胸が苦しくて張り裂けそう

正直、バイトなんて退屈だった、両親の事だってウザくて嫌いだった。

だけど、今はそれが幸せだったって心の底から思う

『貴方の思いは伝わりました。私には貴方を生き返らせる事はできません。ですが、貴方に新たな人生を授ける事は出来ます。』

「新たな人生…?」

『はい…そうです。元の世界では無い、別の世界で生きてみませんか?』

「生きたい!私は!まだ生きたい!」

『分かりました。貴方に幸運が訪れる事を願います。』

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