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第73章 正式に同棲開始
羚汰の就職はまだ決まらないのか、就職活動はどうしているのか。と、一日おきぐらいに電話をしてくる。

羚汰はイタリア研修の準備に追われていて、その類のレポートも多いらしく、その関連準備にバタバタと忙しくしている。
就職活動なんかは、それが終わってからなのだろうか。

稜もその辺りは少し怖くて、聞けずにいる。

そのまま母親に伝えると、不安を煽るようで言えない。
順調だと突っぱねているが、それもいつまでモツかはわからない。

「そんなことより。それで、なんで同棲から、イタリア旅行になるわけ?」

稜が待ち合わせ前に買っていた、イタリアのガイドブックを目ざとく千夏には見つけられてしまったのだ。
その時に、ざくっと説明はしたのだが、まだ千夏はある意味理解出来ないらしい。

稜も、カバンに仕舞って見つからないようにしておけばよかったのだが、つい3冊も買ってしまっていて書店の袋に入れて持ち歩いていた。

一般的な地図なども多いガイドブックと、景色などの写真メインの大きく分厚い本、穴場などの口コミが多いポケットサイズの本。
これでも厳選して絞ったぐらい、イタリア関連の旅行情報誌は種類が多岐に渡っていた。

「ちょっと見せて」

有希子が、写真メインの本を取り出して眺める。

「ほー。凄いね。なんか空気感が違うカンジするわ」

有希子が指したのは、イタリアの象徴とも呼べるドウオモと呼ばれる教会の前だ。

「ここに行くの?」

「わからない。まだはっきり予定が決まらなくて」

「この青の洞窟ってすごくない!?」

きゃいきゃい言いながら3人で顔を突き合わせてページをめくっていると、頭上で聞きなれた声がする。

「お客さま。少しお声が大きいですよ」

注意するというよりも、苦笑をしつつ嗜めるような、他の人たちに聞こえないように少しおさえた声だ。

見上げると、千夏が頼んだマルゲリータと、有希子が頼んだクアトロフォルマッジというチーズ4種が乗ったピザを運んできた羚汰だった。

「!!」

慌てて椅子に座る3人の目の前に、ピザを下ろしてゆく。

ピザを運ぶのは大概羚汰だと、言っていたのだ。

それを待って、千夏と有希子はパスタとピザが選べるコースで、ピザを注文した。
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