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第10章 変化
駅前で待っていると、内山とおぼしき人物が車の中から声を掛けてきた。

あー。確かこんなカンジだった。

失礼な話だが、顔はよく覚えてなかった。顔を見てなんとなく思い出す。


「すいません。内山です。どうぞ乗ってください」

内山は、少し型落ちの国産車に乗っていた。
ファミリーカーとして有名な車だ。

「おじゃまします」

「お待たせしちゃってすいません」

待ち合わせの時間から40分ほど経過していた。
逐一メールが入っていたので、稜は自宅からの時間を計算し、この場所に着いたのはついさっきだった。

「いえ、メール頂いていたので、そんなに待ってませんから大丈夫ですよ」

「早く出たんですけど、高速が混んでて思ったより時間がかかっちゃいまして」

3連休の最後の日なのだから仕方ない。


「天気良いですもんね」

「そうですね。今日は、暑いぐらいです」

スーツを着て、ネクタイを締めていたらしかった。
暑いのでスーツは後ろの座席へ置いてあり、ネクタイは少しゆるめてあった。

多少ぽっちゃりというか、がっしりはしているが、37歳なら多少は仕方ないだろう。
ラグビーをしていたと聞いたら納得する程度の体格である。
実際は、貴之の先輩とのことなので、確か野球だ。

「映画でよかったですかね。どこか行きたい所があれば、言ってもらえば...」

映画と聞いていたので、何も調べてなかった。

「あ、映画でいいですよ。たぶん、どっこも混んでますし」

「そうですか。...いや、映画に行くことにしたって貴之に言ったら、ちょっと軽蔑されたもんで、心配になって」

「えっ。そうなんですか?別にいいと思いますけど」

「ですよね。よかったー」

人の良さそうな人だと感じた。稜のことも気遣ってくれているし。悪い人ではない。

だが、ショッピングモールの中にある映画館に行って人の多さに愕然とする。まず、車を止めるのが苦労で、やっと止めたのは着いてから1時間近く経ったころだった。

映画館も人が多く、めぼしい映画はどれも満席で、時間帯がいいものは席がバラバラになるか、封切りから時間がたったものか、子供用のアニメぐらいしか空いてなかった。夜のものなら空きがあったが、内山は他県に車で帰らなければならない。

かなり迷った挙句、封切りから時間のたった日本映画に決めた。
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