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NEXT 【完結】
第29章 高崎家
久しぶりの弟夫婦の帰省が嬉しかったのか、両親は豪勢なコースを予約していて、稜は弟たちに感謝しながら料理を食べた。

普段、食べたくなるものと食べたくなくなるものがあってー、と言いつつ理子も、カニはよかったのかぺろりと食べていた。

「超美味いシュークリーム買ってきてるから」

空人にそう言われ、稜も実家に戻る。

もう十分話もしたし、悪い予感がして、このまま帰りたかったがそうはいかなかった。

シュークリームも食べ終わり、「そろそろ...」と言いかけたところで、母親の尋問が始まった。


「ねえ、稜。あんた、恋人がいるの?」

視界の隅で、空人が「ほらね」という顔をしている。

「...いないけど」

母親が少しほっとした表情を浮かべる。

父親も無表情だが、気にしているのだろう。
また本を読みながらではあるが、こちらに気配を送っている。

「あんた、もうすぐ31でしょ。結婚はどうするの」

また始まった。最近は会う度にこの話だ。
いつもは母親ももっとキツイ口調だし、稜もこの話になると逃げるので、これ以上にはならない。
今日は弟夫婦の手前、いつもより大人しい話し合いに発展している。

「...それは。いつかはしたいと思ってる」

「いつかはって、恋人がいるわけでもないし、お見合いは嫌だって言うし、会社も女の子ばっかりで、どこで出会うのよ」

「...」


稜が無言になったのを見て、神棚から封筒を一つ取り、稜の前へ置く。

「これ、隣町のおばちゃんがよこしてくれたんだけど。見てみて」

稜は、なんとなく中身がわかりながら、おそるおそる中身を取り出す。

案の定、中身はお見合い写真と釣り書きだ。


「駅前の佐々木医院の3男で、32歳。あんたと同じ高校だって」

そこには誰かの結婚式に参加した時に撮った集合写真の切り抜きのような写真があった。

フォーマルなスーツで、無表情で立っている。
引き延ばしているからか、少し紗がかかっていてよく顔はわからないが、細面ですらりとしている。

「なんでも都会でIT企業に勤めてたんだけど、2年前に院長が倒れたじゃない?その時に帰って来たらしくって。お兄さんが2人いるんだけど、長男が内科を継いでて、次男が同じ敷地内で歯科をはじめてて。で、帰って来た3男がそのITなんちゃらを利用して、今病院でー」
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