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NEXT 【完結】
第30章 不安な気持ち
ふと目が覚めてみると、稜はまだ一人で寝ていた。


羚汰...。まだ帰ってないんだ。


スマホを手さぐりで探す。

電源を入れると、5時過ぎだ。


昨日は帰らなかった???


胸に何かが込み上げて来て、また目元が熱くなる。


すると、隣のリビングから笑い声が聞こえた。


ガウンを羽織ってドアを開けると、カウンターに羚汰が見えた。


カウンターに置いている背の高いスツールに腰掛け、ノートパソコンの前で談笑をしている。

どうやらイタリア語だ。


「...稜!」


羚汰が、照れた顔で手を振る。


その後、少しだけ会話をして、画面を閉じた。


「ごめん。イタリア人の友達と話してて」

パソコンの横には、ピザが数枚置かれていて、食べながらスカイプをしていたらしかった。

「...今、帰ったの?」

「いいや。...ごめんね。昨日は遅くなっちゃって。でも2時前には帰って来て、30分ぐらい前までは一緒に寝てたんだよ」

「起こしてくれればよかったのに」

「...ん。なんか爆睡してたから。疲れてたのかなって。俺も疲れてたし、一緒に寝てたんだけど。お腹空いちゃって目が覚めてさー。それで、こそっと持ち帰ったピザ食べてたら、友達からスカイプが来て」


なぜだか流暢に言い訳を言い続ける羚汰の背中に、スツール越しに抱き着く。

「...ごめんね。起きた時いなかったから、さみしかった?帰ってないと思った?」

温かい羚汰のぬくもりと、いつものあの匂いに稜の心が少しほぐれる。


「ごめん。...ピザ、食べる?」

羚汰が、自分の口にピザを運びながら、残りの一枚を稜に差し出す。

「いらない」

稜はずっと抱き着いたままだ。

しばらくぎゅうっとした後、「ベッドで待ってる」と言い残して、寝室に消えた。



寝室のベッドにもぐりこんでいると、リビングで羚汰が洗い物をする音がする。

その後もカタカタ音がして、ベッドに帰って来たのはあれから5分後だ。



布団に潜り込み、今度は羚汰が稜をぎゅうっと抱きしめる。


「...ごめんね」


どうして羚汰はこんなに謝っているのだろう。

ぎゅうっと抱きしめられているのに、なんでこんなに不安なのだろう。
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