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第35章 お迎え
「羚汰、もう着くよ?」

「んー。こうしてたいな~」

羚汰が頬ずりしている間に、7階に着いた。

しぶしぶ離れて部屋に向かう。

「ねぇ。その、...昨日言ってたやつ、始まった?」

「...うん」

生理が今日あたり来そうなことを、伝えてあった。

スマホアプリに記録するようになって周期がわかり、予測が正確に出来るようになったのだ。

「そっかー」

羚汰が名残惜しそうに、稜の部屋の前で立ち止まる。

「ごめんね」

「いや、しょうがないよ...しょうがないけど、ね」

羚汰がなかなか手を離してくれないので、部屋に入れない。

「羚汰、寒いんだけど...」

「...明日は実家でしょ?今日、一緒に寝たらダメ?」

「え」

「何もしない。一緒に眠るだけ。お願い!」

うっ。そんな顔でお願いされたら...。

稜は少し悩んだが頷くしかなかった。





稜の狭いベッドで、羚汰に後ろから抱えられるようにして眠りにつく。

本当に何もしないのか、ちょっと不安に思っていたが、そんなそぶりは全くない。

前日の“1週間分”のセイで、寝不足だったのもあったらしい、お腹が少し重たい稜より先に羚汰の寝息が耳元ではじまった。

狭いベッドの中、反転して羚汰の顔を覗きこむ。

気持ちよさそうに寝息を立てている。

それだけで、なんだか心の中が温かくなってくる。



明日の土曜日は、千夏の新居で有希子と3人で鍋パーティをすることになっている。

千夏の夫である貴之は泊りがけで会社の忘年会らしく、丁度良かったと新居のお披露目という名目でお泊り会だ。

千夏としては、なんとしても稜を説得したいらしい。

メールで隠し子騒動はデマだったと伝えたのだが、まるっきり信じてくれないようだ。


そんな理由ならとお泊り会は...と言うと、一転してもうその話はしないと言い出した。

バレバレの嘘だろう。

有希子に相談すると、笑って「稜の味方になるから、行こう」と言ってくれた。



この寝顔を見たら、千夏も信じるだろうに...。


稜はまた反転して、羚汰の腕を自分にまきつかせるようにして、目をつむった。
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