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第35章 お迎え
「ホントの事を言ったら、あの調子で大騒ぎされちゃうから、あんまり言いたくなくて...」

歳をゴマかしたのはやり過ぎだったけど...。

「うん。よく分かった」

羚汰が苦笑している。

怒ってない...のかな。

忘れたのかもしれない。

少しほっとする。

「でも、賑やかで楽しそうな職場だね」

「うん。でも、最近なんだけどね、凄く仲良くなったのは。ちょっと前まで“小局様”って呼ばれてたし」

「コツボネ?」

「お局様の次、ってことー」

そう言っていると、LINEが届いたのを知らせるくぐもった音がカバンから聞こえる。

慌てて取り出してマナーモードにしながらも、次々とポップアップされるのはさっきのメンバーからのようだ。

どれもこれもが、羚汰を褒めたり羨ましがるような内容だ。羚汰に友達を紹介してもらいたいという内容のものもある。

ハートマークがいっぱいついた絵文字やスタンプ付でそれぞれから大量に送られてくる。

「羚汰、モテモテだよ?」

「んー?そう?...妬けちゃう?」

羚汰が体を寄せて稜を覗き込む。

「...うん。ちょっと」

やっぱり、歳の近い麻衣や里奈と並ぶと、年相応のしっくりくるカップルだろう。

「マジで?なんか嬉しいかも」

少し沈んだ稜に気付いたのか、羚汰がつないだ手を引き寄せ、反対の手で稜の頬を包み、至近距離で微笑む。

「でも、俺は稜にさえモテたらいーの」

「ちょ!電車!!」

稜が慌てて後ずさる。

ほんと、こういう事を所構わず、そして何気なくやりだすから、気が抜けない。

「ちえー」

そうこうしているうちに駅に着き、マンションへ急ぐ。

風向きなのか、駅前の通りに風が吹き荒ぶ。

風が強いのもそうさせている要因だが、空気自体がとても冷たい。

「さっむーー!」

「明日、また雪が降って、結構積もるかもって言ってた」

今年は暖冬だと言っていたのに、この地域にしてはよく雪が降る。

「マジ~?」

2人ともマフラーに顔を埋もれるようにして、通りを小走りだ。

寒さと風が強いので、しゃべることも出来ず無言でマンションまでたどり着く。

なんとかエレベーターに乗り込み、羚汰が稜を抱きしめる。

「うー。寒かったっ!」
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