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第47章 思い込み
デスクに向かいながら、稜は内心バクバクである。

こんな風にキツく言うつもりはなかったのだが、ここまで言わないとわからないだろう。

デスクに向かうと途中で、桃香に近寄って抱えられるようにして迎えられる。

小声で、口々に大丈夫か聞いてくる。

稜はなんとか頷く。


ミーティングスペースのほうを伺っていると、佐々木が何かぶつぶつ独り言をしゃべりながら立ち上がり、そのままぶつぶつ言いながら怒ったように外へ行くのがわかった。

佐々木がドアから出てから数秒後、丁度会社に電話もかかっておらず、その場にいた全員がみんなが口々にしゃべり出す。

「うっわーーー。何ですか、あれ」
「きっもーーー!!」
「ちょー自過剰~!!!」
「何なになんで勘違いしてんの」

稜はコートをロッカーにしまって、やっとの思いで席に着く。

一日分の体力を使い果たした気分だ。

「疲れた...」

「婚約者って嘘ですよね?」

恐る恐る桃香が聞いてくる。

「勿論!」

皆にも心配かけたし、正月の見合いからの下りを軽く一通り説明する。

「うっわ~。それでなんであんな風に勘違い出来るのか不思議~」

「よかった。もうあのイケメン君と別れちゃったのかと思った」

「別れてないから!」

「え、でも、じゃあなんでお見合いなんか」

「...随分前に決まったお見合いだったから、断れなくて」

皆大いに納得したらしい。

「しかし、あの人マジでヤバくないですかぁ〜?あの風貌で超ナルっぽかったし〜」
「ほんとよね〜。こっちで聞いててもトリハダもんだったー」
「んで、ありえないほどKYとか、きっも〜!!」

稜は苦笑いするしかない。

「今日は彼氏さんに言って迎えに来てもらったほうがいいんじゃないですか?」

桃香が提案してくれる。

しかし、今日も羚汰は一日中バイトの筈だ。
急に休めないだろうし、心配かけるのも。

電話だけでも、とみんなから口々に勧められる。

確かに、羚汰の声が聞きたい。
ちょうどランチとディナーの狭間の休み時間の頃だ。


皆に了解をもらって、非常階段の所で電話をかける。

「稜!稜から電話とか、珍しいね。仕事は大丈夫なの?」

ワンコールもしないうちに羚汰が電話に出る。
ちょうどLINEを打とうとしていたところらしい。

羚汰の声が聞こえて、心底ほっとする。
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