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第59章 ハルノナヤミ
「え...わかっちゃう?」

「そりゃぁねぇ。昨日、エントランスで私会いましたし〜」

そうだった。桃香が変質者が出るとか脅しまくるので、かなりビクビクして羚汰をその変質者と間違えた事を思い出す。

あの時、桃香は気をきかせたつもりだったということか。
桃香からの一連の連絡について問いただすとあっさり認めた。

「効果あると思ったんですけどね。てへっ」

「てへじゃないよ!本当に怖かったんだから!」

すいませーん。

言葉だけは謝っているが、ココロがこもってなさげだ。

桃香ちゃんってこんな子だっけ?

「あーあ。いいなぁ。彼氏とラブラブで」

大きなため息と共に、桃香が大きくつぶやく。

「?桃香ちゃんも、ラブラブでしょ?彼氏と」

年末にコンパした、同級生とイイカンジになって。
クリスマスも一緒に過ごしたと言っていたし、どこに行ったー、何して遊んだーなど、散々惚気話を聞かされたきがしたからだ。

稜の当然といった質問に、桃香がまた大きくため息をつきながら、椅子をゴロゴロさせて席に戻ってゆく。

「...彼氏じゃないですもん」

「へっ?」

小さな声で、聞き間違いかと思ったが、どうやらそうではないらしい。

電話を終えた麻衣がこっそり近づいてきた。

「高崎さん、今それ禁句ですからぁ」

「えっ。そーなの?」

桃香にバレバレではあるが、声を落としてヒソヒソ話だ。

「なんか、まだカレカノじゃぁないらしんですよぉ〜」

??

事情はよくわからないが、つまりはどちらも今一歩踏み出せていないということらしい。

もうあれから、4ヶ月は経とうというのに...。

何か言葉をかけてあげたいが、いい台詞が思いつかない。

戸惑っているうちに、桃香は電話をかけ始めた。




昨日の残業の効果もあって、稜は早く仕事を終わらせた。

どうやら、麻衣たちは気落ちしている桃香を誘ってご飯に行くらしい。

稜も誘われたが、今日は羚汰も早く帰ってくると言っていたし。
ここは稜が居ない方がよさそうなので、用事があるといって辞退した。

そそくさと会社を後にしてから、スマートフォンを取り出す。

そこには羚汰から連絡が入っていて、少しだけバイトをしてから帰るというものだった。

早めていた足をゆっくりにして、それでも早々に駅にたどり着く。
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