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NEXT 【完結】
第9章 協力
月曜日の朝、稜はいつもの出社時間に合わせて家を出た。

玄関ドアを少し開けると、いつもより少しだけ手応えがあった。

カンッ!!...カンカラカラカラ...

ん?何の音がしたんだろう。

ドアをいつも通り開ける。

一歩踏み出すと、ヒールで踏んだ床が、濡れた感触がする。

見ると、薄茶色の水が広がっていて...。

10数本のタバコの吸殻が廊下に広がり、500ミリリットルのビールの缶が転がっている。


え!?
吸殻の入った缶を倒しちゃった!?



状況を把握するのに時間がかかる。


えー!!時間がっ!!


稜は慌てて部屋に戻り、ビニール袋でまずはちらばった吸殻を拾いはじめる。雑巾は、その後だ。

缶は、ドアを開けたとき勢い良く飛んび転げまわったらしかった。
液体が、稜の部屋を挟んだ両側の部屋のドアあたりまで広がっている。

ガチャッと音がして、701号室の住人―、リョウが顔を出した。

「...あーあ」

「ごめん!!すぐ片付けるから!!」

「やられちゃいましたね」

言われた意味がわからなかった。
リョウはいつも思わせぶりというか、なんというか、人をかるーくイラッとさせる。
今回もソレだろうと、かるーく無視をしていた。

気づくと、リョウはどこから持ってきたのか、雑巾で薄茶色の液体を拭いていた。

「!!」

「時間ナイんでしょ」

「...ありがと」

また借りを作ってしまった。

二人がかりで大慌てで拭き取り、なんとかキレイにする。


タバコの吸殻や臭いが激しい雑巾と一緒に、何重にもビニール袋でくくり、とりあえず玄関先に置く。
手を大急ぎで洗って、玄関を出る。

なんとか10分ぐらいのロスですんだ。
走っていけば、いつもの電車に乗れるハズだ。

エレベーター前に行くと、ドアを開けてリョウが待っていた。

「ごめんね!!ほんとうに助かった」

「いえ」

珍しくリョウが言葉少なだ。

「あんなとこに吸殻置かれたら、倒しちゃうよ」

1階に着き、またリョウがボタンを押してくれているので、稜からエレベーターを降りる。
降りるときにすれ違うリョウの表情が気になる。


そこへ、メールの音がする。


稜の母親から、カイ3世の写真付きのメールが毎朝届く。

稜は、急いでいたので軽く確認するとスマホをしまった。
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