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第9章 協力
マンションのエントランスを通り過ぎ、駅までの道のりを少し急ぐ。

リョウと目が合う。
何か言いたげで、だけど躊躇しているような、なんとも不思議な顔をしていた。

自然と、何となく並んで急ぎ足で向かう。

リョウの沈黙が何かを物語っているようで、稜は聞いてみることにした。


「?何?」

「...イヤガラセですよ」

「えっ!?イヤガラセ??」

「...よくある、イタズラのテです。ドアの丁度開くところに、吸殻と水を入れた空き缶を置くと、そこの部屋の住人が出掛ける時に必ず倒すから」

「えっ!?なんで、そんなイヤガラセ!!一体何の為に...」

「平日の朝狙えば、大抵その片付けに時間を取られて、遅刻とかしたり。まあ、片付け自体が嫌なモンだから...」

「ヒドイ!!」

「...俺が思うに、602号室のヤツだと思いますよ」

「ええっ!!なんでわかんの?」

「...なんとなく」

それまでも、稜のほうは見ずに前を向いたまま話していたリョウだったが、明らかに顔を背けて合わせようとしない。

「本当にそうだったら、許せない!」

「いや、たぶん仕返しだから...」

「仕返し?何の??...それより、何?さっきから。ハッキリ言ってよ。もう駅着くし」

怒りで稜はいつもより強気になってる。

「たぶん...」

「たぶん、何!」

「こないだ、えーっと、高崎さんの部屋が、ちょっと、その賑やかだったから...」

「...は?」

「...いい加減気づいて下さいよ!!あーもう」

ちょうど駅の改札のあたりで、リョウの声に幾人かすれ違う人が振り向く。
何かを吹っ切ったように、リョウはつづける。
それまで、躊躇したような口ぶりだったが、今度は逆ギレ状態である。

意を決したように稜に向き、キッパリとした口調で聞いてきた。


「土曜の夜、彼氏、来てたでしょ」
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