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第71章 宿
両親の気が変わらないうちに、と稜たちは実家を早々と後にした。

母親が車で送ってくれるというのを丁寧に断って、また駅までの道のりを歩く。

途中少し道を変え、遠回りして、稜の出身の小学校の前を通る。

土曜日の夕方ということもあって、校舎は静まり返っている。
中には昨今の事情で入ることは出来ない。
外からのみ様子を伺う。

校庭ではスポーツ少年団だろう、ソフトボールの子供たちが数人練習をしていた。

「私も久しぶり過ぎて。うーん。こんなんだっけー」

もっと校門は大きかったイメージだ。
そらだけ大きくなっているということだろう。

「あ、小さい時の写真、見せてもらえばよかったー」

稜のこれまでの写真を見せてもらうおうと、密かに羚汰は考えていたらしい。

「見せませーん」

「えー。何で?ケチー」

そのまま小学校をあとにする。

中学校も行ってみるものの、やはり中は入れなそうだ。
校庭では、サッカー部とテニス部が部活をしていた。

「稜は何部だった?」

「友達に誘われて、ちょっとだけバレー部にいたけど。キツくて辞めちゃった」

練習もさることながら、先輩の1年生イジメが激しかったのだ。
夏休みになる前に、その友だちと一緒にやめてしまった。
それからはずっと帰宅部だ。

「羚汰は、サッカー部?」

「うん。そう。中高ずっとサッカー部だったなぁ。今思えば、他の部活もやっとけばよかったかな」

相当練習がハードだったようだ。
朝晩と部活のイメージしかないらしい。

「他の部活って、例えば何部?」

「うーん。なんだろ。バスケとか?流行ってたし。そしたら背が伸びたかも!」

「あはは。でもそしたら、また、リョータって呼ばれちゃうよ」

バスケの有名漫画に出てくる登場人物と同名な羚汰は、背が同じくらいでからかわれたと言っていた。

「そうだった!リョータも伸びてないし、俺も無理か〜」

身長がそんな高くないことを気にしているのだろうか。

高校は歩いていくには遠すぎる。
諦めて駅に向かう途中で、小さな公園にさしかかる。

「ブランコ座ろっか」

「いいね!」

マンションの近所の思い出の公園を思い浮かべて、公園の中に足を踏み入れた。

小学生や親子連れが公園で遊んでいて、ブランコは人気らしく座れそうにない。

仕方なくベンチに腰掛けた。
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