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少年悪魔
第2章 誕生日の夜
「いーい匂いだよね、ほんと」
遥斗は朝も同じようなことを言っていた。
繭はさっき食べたばかりのカップケーキの匂いがするかのと思い、それを訊くと、遥斗は口の両端を上げた。
「――いい匂いっていうのは、繭のことだよ」
いつの間にか、繭と遥斗の距離が近くなっていた。
繭は一歩後退り、少しでも遥斗と距離を取ろうとした。
近づいてはいけないと、頭の中で警鐘が鳴っている。
「ねえ繭」
遥斗が一歩詰め寄る。


――近づいてはいけない。いけない。いけない…!


息を呑んだその時、予鈴が鳴った。
「…わ、たし…、教室戻るからっ…」
わざとらしく足音を立てながら、繭は階段を駆け降りた。
遥斗はふっと一つ息を吐くと、ゆっくりと階段を降りていった。
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