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監禁DAYS
第2章 今すぐ返して

 上手く顎を動かせない美月の唇から唾液が伝う。
「っは、ん」
 目を開けると、涙をこぼしながらギュッと目を瞑る彼女の顔に、男は罪悪感を感じた。
 だが、仕掛けてきたのは美月の方だ。
 なら、何故泣く。
 口を開放すると、荒く息を吸いこんだ。
 昨晩とは違う。
 首元から香っていた香水の匂いが一切しなかった。
 理由は風呂に入れただけではないのだろう。
「ふ……納得いかない顔して」
「当たり前だ」
「ソレ、どうするの」
 男のズボンをちらりと見て、挑発する口調で。
「お前もそろそろ限界になるんじゃないのか?」
「この部屋時計がなくて困ってるのよ、だから……」
「だから?」
「今すぐ、返して」
 強い語気に怯む。
「お前の恋人か?」
「そうよ。貴方がヤってくれないならアレで逝くしかないもの」
「人質に銃渡す馬鹿だと思うのか」
「スリルがなくなっちゃうけど、弾全部抜けばいいじゃない。あと脚は壁に括り付けたままでいいわ」
 よく言う。
 男はテーブルに戻って銃を手に取った。
 冷たい銃身を撫でながらシリンダーから弾を指ではじきながら取り出す。
 カラン、と弾丸が転がる。
 指をかけて銃を回しながら弾倉を元に戻す。
 美月はその一挙一動を厳しい目つきで観察していた。
「んな怖い眼で見なくても扱いぐらいは心得てる」
「そうかしら。随分荒々しい手つきに見えるけど」
「いつもは弾入れたまま使ってんのか」
「不能の相手とヤって何が愉しいの?」
「……気違いが」
「言葉責めは後ででいいから。早く頂戴」
 美月の元に戻った男が銃を弄りながら尋ねる。
「これで俺がお前をヤった場合もカウントされんのか」
 男は言ったあとで自分の言葉を疑った。
 一体何を尋ねているのかと。
 訂正しようとしたが、間に合わなかった。
「たぶん、されないけど。え? ヤりたいの?」
 ガン、と美月の足元にそれを放って手首の縄を解きにかかる。
「ちょっと!」
「シャットアップだ! 解くから待ってろ。独りで楽しめ」
「貴方もちゃんとそれ出した方が……」
 その言葉が終わらないうちに男は肩で風を切りながら廊下に出て行った。
 じんじんとする手首をさすりながら、美月は銃を拾う。
 そしてうっとりと頬を這わせた。
「まずは起たせてあげなくちゃね」
 そう言って赤い舌を突き出した。
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