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監禁DAYS
第2章 今すぐ返して
男は煙草を取り出して、落ち着くように煙を吸った。
「っくそ……」
すぐに悪態をついて灰皿に押し付ける。
その様子を見ていた美月が哀れなものをみるように男を見つめる。
「みんなそうよ」
「何がだ」
「嗅覚がなくなるとね、煙草をやめるの」
「はっ、だろうな。味覚はあっても全然感覚が違う。煙が鼻を通っても何も残していかないんだ。何が愉しくて無臭の煙草なんか吸うんだよ」
ガンッと美月のそばにライターが投げつけられる。
びくりと肩を震わせ、彼女は溜息を吐いた。
「っくそ……っくそ」
「なんだ。一応怖いんだ」
「あ?」
「さっきからあまりにも普通だからさ。感覚が消えても怖くないのかなって思ってた」
椅子を引く音がする。
男が此方に近づいて、しゃがんだ。
「……お前は何人をこんな目に遭わせてきたんだ?」
「百人くらい。全部なくなるまでヤったのは六人くらい」
「何がカウントの区切りなんだ。一日一回か? 一発か?」
「やだな。三発も中に出した貴方がそんなこと言う?」
「じゃあ一回毎にか。それも十二時間間隔か?」
「副作用に合わせてそうなのかも」
ダンと美月の顔のそばに手がつけられる。
迫った男の顔をまっすぐと見据えた。
「お前はどうだ」
「……そんな無粋な質問するかな、普通」
「じゃあ、なんでそんな平気そうなんだ」
「慣れたの。悪い意味で。目の前で男が苦しもうが恐怖に怯えようが私には関係ないって気づいたもの」
「原因はお前だろ」
そこで美月が身を乗り出して男の下唇を舐めた。
呆然とした男の股間を膝でぐりと押し上げる。
「っつ」
「こうやって勝手に反応して私とヤる方が悪いんじゃないの。女が妊娠したらそれはお前が悪いだろって一方的に逃げる男と同じ理屈よ。今度はリスクはそっちにしかないってだけ。一生じゃないだけ私たちの苦労に比べたら小さいものじゃない」
「視覚に聴覚まで消えたら死の危険性もあるだろ」
「そうね。だったら何?」
たった今己の唇を舐めた美月の口が残酷なことを淡々と吐き出している。
その事実に男は寒気を感じた。
美月の膝を手で押さえつけ、顎を掴む。
「お前は相当狂ってる」
囁いた男の口に、美月は今度は唇を重ねた。
顎を掴んでいた手から力が一瞬抜け、今度は自ら貪るように美月の頭を鷲掴む。
「んんっ」
舌をぶつけあい、舐めあう。