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朏の断片
第3章 #2
「お前とデートしたいってのは、俺じゃなくてミキなんだ。けどミキは……代わりに俺が」
「んー?」
言い淀む上田の言葉を、片桐は頭の中で一度分解し噛み砕く。
「つまりそのミキちゃんの代わりに女装までしてるん?」
普通では考えられない。手を伸ばし首筋から髪に指を入れると上田の肩が強ばるが、綺麗なロングヘアはカツラでも何でもない、上田の地毛だった。
もはや女装なんてレベルではない。
「ミキちゃんて上田の何なん?」
「……ミキと俺は二卵性双生児で、……ミキだけ生まれつき体が弱くて、俺だけ普通なのに……ずっと病院で、だから、ミキのしたいことは全部代わりに俺が」
「それで自分が女子高行ってんの?」
頭のてっぺんから足の先まで。装うくらいじゃ真似も出来ないほどに上田は完璧に女として日々を演じていた。家でも学校でもそこにいるのは女としての上田美希であり、上田が素の男に返るのは美希本人の前でのみ。
これまではずっとそうだった。