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理想と偽装の向こう側
第9章 衝動と不安
私は、また作品を見渡した。


前回気に入った『Cielo verde』の立ち止まった。


凄いインパクトがある構図な訳ではないが、微妙なグリーンの同系色の使い方に目を奪われる。


「やっぱりシエロ、気に入ってくれてる?」


須永さんは、紙コップに入れたお茶を差し出してくれながら話しかけてきた。


それだけで、心臓止まりそうです!


「は…はい…」


「何で?」


私は自然と感想を述べ始めた。


「『Cielo verde』って…イタリア語で緑の空ですか?」


「…調べた?」


「はい…気になって…」


「ふ~ん…」


須永さんは、お茶を飲みながら口元が笑った。


「この作品に、何色使いました?少なくとも15色くらいですかね?後、空のようでまた他のものにも見える部分が、ここと…ここと…」


技術的な部分も気にったが、惹かれたのは色調だった。


「凄い優しい色使いしますよね…誰かの為に描いたのかもしれませんが、先日…須永さんがポストカード下さった時、何かこの作品そのものかなって…思ってしまって…」


「そのもの?」


「複雑そうで、寂しいそうで、面白くて、結構クセが強いけど、奥底は優しい…感じかな…」


そう言い終わって、須永さんを見ると、眼を見開いて固まっていた。


はっ!ヤバイ!
調子こいて、ベラベラとまたやっちゃったよ!

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