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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「…嫌じゃなければご飯作りに来ようか?」


「…え?」


「あっ押し売りみたいだったらあれだけど…洗濯とかもするよ!」


「てか…香織も忙しいじゃん」


「う…まぁ私はベースがあるしスケジュール管理しながら進めてるだけだから…創作はさ…そんな訳にはいかないじゃない…身を削るからさ…。」


「………」


沈黙が痛いよ…。


「は…は…やっぱりお前って…」


「なにっ!」


嘉之は人差し指を鈎の様に曲げ、私の唇に当ててきた。


「この口、最強だよな…。」


「ひゃひ?」


何?押さえ付けられてて、言葉が発られない。


「じゃあ…頼むわ…」


「ひぇ!?」


「悪いけど、締め切りまで宜しく」


その時の笑顔が、余りにも可愛くて、首から上が吹っ飛ぶかと思った。


「ひゃひ!ひょろひょんひぇ!」


「ははは!なに言ってんの?」


なに言ってんのって、あんたが指で押さえてるからじゃない!


とりあえず、笑顔で話せる様になって良かった…。


私もハードになるが、無事に仕上がるよう何がなんでも見守ろう。


それが私なりの嘉之への、愛の証だった。

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