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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「パシッ!」


「ひゃっ!!」


弾けた音と冷たい感覚が、同時に襲った。


「香織も、水飲みたかったの?」


私の手には、ミネラルウォーターが握られていた。


「あっ…うん…汗かいたし、喉渇いたかな…」


「ふ~ん」


ニヤリと嘉之は、笑った。


握手もだし…好きかどうかも聞きにくいし…
出会って5年目に入るのに、こんなことで悶々としてしまうのは…
何だろうか…。


「香織…」


「んっ?」


嘉之は私を腕の中に抱き寄せ、腕枕をしながら包み込んだ…。


うっ…幸せだ…
やっぱり言えないよ…
せめてプロジェクトが終わったら、デートしたいな…。


はは…デートもしたこと無かったよ…。


「あのね…嘉之…」


声を掛けたが頭にスースーと、寝息が聞こえた。


寝てる…早っ…。


今日…緊張したんだろうな…
慣れないことだったろうし…。



嘉之の胸顔を埋める。


トクン…トクン…


一定に響く鼓動が愛しい…。


心地好くなりながら、眠りに付いた。

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