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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
一週間が過ぎ、私の体調も落ち着いてきた。 


嘉之も余り無理強いをしなくなり、体調を気にしてくれるようになった。


そう思うと、貧血も無駄じゃなかったかな…なんて。


久々に同僚の樋口さんと飲んで帰ることになり、店を何処にするか話ながらエントランスを歩いていると、後方から呼び止められた。


「渡辺さ~ん!樋口さ~ん!お疲れ様で~す!」


この声は…


「お疲れ様!元木さん!」


「お疲れ様…」


「お二人とも真っ直ぐお帰りですか~?」


「いや~二人で飲みに行くよ!」


「えぇ~いいなぁ~!私、一人ぼっちですぅ~」


「はは!元木さんも来る?なべちゃん良いよね?」


「…いいよ~」


ダメって言える訳ないじゃん!


「きゃ~!嬉しいでっす!」


ちょっと胃がチクッとキタ…


無事に過ごせますように…。



そして三人で、安上がりな居酒屋に向かった。

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