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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
22時…

黎子と別れた後、嘉之のマンションに寄ってみた。


冷静にならないと…
そう思いながらも衝動的に連絡も無しに、いきなり来てしまった。


一目顔が、見たいな…。


恐る恐るインターフォンに指を伸ばすが、寸前で引いてしまう。 


何で気軽に会えないんだろう…。


何時だって私は、嘉之の顔色を伺ってしまう。


立場が圧倒的に弱いのは、私の一方的な思いだからなのかもしれない…。


えい!ダメ元で押してやる!


「ピンポーン!」

………居ない? 


再度押したが、反応はない。


「タイミング悪っ…」


帰ろう…。


そう思って、後ろに振り返えった瞬間だった…。


「香織じゃん!なんでいるの?」


スーパーの袋を持った嘉之が立っていた。

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