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理想と偽装の向こう側
第10章 信頼と疑惑
「なんか用事あった?」


「あ…うん…ちょっと…」


顔が見たくて…
って、言った方がいいのかな…。


チューハイの缶をテーブルに置いて、嘉之の方に向き直す。


「ん?どうしたの?」


「嘉之…」


「香織っ?」


気付いたら私は、嘉之に抱き着いていた。


ヤバっ!
衝動的になり過ぎた!


「珍しいな、香織から抱き着くなんて。」


優しい声が頭上から降りなが嘉之は私の身体に手を回してくれ、右手で髪を撫でた。


それが妙に嬉しくって、涙が出そうだった。


「嘉之…インタビュー…どうだった?」


本当は元木さんのことが聞きたいけど、知らないフリをするしかない。


「インタビュー?あぁ一昨日のね。結構赤裸々に話したかもな」


「そっか、広報…楽しみだな…」


私は嘉之の服をギュッと掴んだ。

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