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隠匿シリーズ☆番外編
第6章 彼の忘れられない人は……?



 ──トン、トン


 扉がノックされる音に、ビクリと肩が跳ねる。


 レオが舌打ちをした。


「……ったく、いいところを。アリエッタ、こっちへ」


 悪態をつき、アリエッタを寝室へと連れ込む。


「誰かに見られるとマズイ。俺がいいと言うまでここにいてくれ」


 そう言ってレオは寝室の扉を閉め、訪問者の相手をしに行った。


 アリエッタはその場にへなへなと崩れ落ちる。胸は張り裂けんばかりに鼓動を打っていた。


 レオとは数えきれないほど口づけをしてきた。それでも常にドキドキとさせられ、あの熱い口づけに蕩けさせられてきた。


 だが今、胸が張り裂けそうなのは、それとはまた違った高鳴りだ。初めて口づけをするような緊張に、力が抜けてしまっている。


 事実、今のレオとは初めて口づけしそうになった。


 姿形は多少違えども、レオには違いはないのだが、彼に初めて逢った気さえする。


 いや、彼とは初めて逢ったのか──と、もう本当に何がなんだか解らなくて、頭がぐちゃぐちゃだった。


 どうしてここにいるのかや、元の世界へ戻れるかなど、考えなくてはいけないことが沢山あるはずなのに、煩い心臓の音がすべての思考を奪っていた。






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