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第11章 『あなた』

その顔は思いの外、一仁さんには似ていなかった。
三年という月日が変えたということを考慮しても、二人は瓜二つというほどは似ていなかった。

写真ではいつも見ていたが、こうして本人を直で見ると相違点は幾つもあった。
目の形や輪郭は確かに似ている。
しかし眉や鼻の形、唇の色も一仁さんとは違っていた。

私はそっと眠る彼の頬に手を添えた。
少し伸びた髭がチクリとする。

聡志も三年間、大変な思いをしたんだよね……
私だけが辛かった訳じゃないもんね……

私の脳はわざと一仁さんのことを考えないようにしていた。

私の悪癖、問題の先伸ばしだ。

そう、夢は諦めた頃に、叶う……

諦めるからにはそれなりに覚悟もしている。
叶わなくて構わないとさえ思っている。

そんなときに夢は叶ってしまう。

人生とはそんな皮肉に満ち溢れているのかもしれない……