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仔猫と狼
第11章 知りたくない

…くそっ…。
一体俺は何をしているんだ…。
あいつを部屋まで送った後、近くの公園に来ていた。
「…。」
さっき、とっさに掴んだあいつの腕…、凄く細かった…。
「くそっ。」
俺は何がしたかった。
冷静になれ。
落ち着くために吸おうと取り出したタバコの箱を握りつぶし、投げ捨てる。
俺は、あの腕を掴んで何を言おうとした?
あいつを抱こうとした理由か…?
脅す言葉か…?
それとも…。
ベンチに腰掛け、息を吐いた。
「はぁー…。」
その時、ポケットに入れていた携帯が震える。
雑にポケットから取り出すと画面には山田の文字があった。
「………はい。」
山田からの進捗状況を確認する電話。
山田があいつを金ヅルとしか見てないことがよくわかる言葉が俺に投げかけられる。
それはいつも通りの会話のはずなのに、今までと寸分変わらずな言葉なのに、山田が俺ら声優を商品としてしか見ていないという事実がひどく感じられる電話だった…。
山田との連絡が終わり片手に携帯を握ったまま手をおろした。
今更だろ…。
ブブブブブ…。
よく分からない感傷に浸りながら座っていたらまたもや携帯が震える。
そこには片岡の文字があった。
届いたメールには、お疲れ様という言葉と頑張るという言葉だけがシンプルにのっていた。
「フッ。」
俺は無意識に口元には笑みが浮かべていた。

