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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
夢五郎は来るときは間を空けず頻繁に来るが、長いときにはふた月近くでも平気で来ない。そんなときには、何故か心にぽっかりと穴が空いたような気がして、一抹の淋しさを感じてしまう。今も、早く夢五郎が来ないかなどと考えていたとは、口が裂けても言えない。
夢五郎の声に愕いたものか、鶯の囀りがピタリと止んだ。ほどなく、梢を揺らし、鶯が飛び立ってゆく。その拍子に、桜貝のような花びらがはらはらと散り零れ、舞った。