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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第36章 《巻の参―杏子の樹の傍で―》
「ああ、折角良い声で啼いていたのに、逃げちゃったじゃないですか」
 幾分非難を込めて言うと、夢五郎が肩をすくめた。
「済まねえ。姐さんの顔を見たら、嬉しくなっちまって、つい大声が出たのさ」
 と、このどこまでが冗談なのか判らない話し方もいつもどおりである。
―私も夢五郎さんに逢えなくて、淋しかったの。だから、嬉しいわ。
 ひと言素直に言えば良いのに、そのひと言がなかなか出てこない。
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