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第64章 十三夜の月　《壱》

　そんなある日、美咲は、壱之進がお京を正式な妻に直したという話を人づてに聞いた。むろん、兄は妹の心を慮り、そんな話は一切しないが、例のお喋りな兄の上役の妻がやって来て、洗いざらいを喋っていった。
　祝言は内藤家でとり行われ、殿のご臨席を賜るという栄誉も与えられたという。三年前、美咲が嫁いだときはごく内輪だけの至って簡素でささやかなものだったというのに―。