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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
「その昔―昔といっても、俺の婆ちゃんがまだ生きてた頃、そういえば、確かに山の上に小さな庵があって、そこに尼さんが住んでいたという話なら聞いたことがある。だが、それはもう今から二十年も昔のことだぜ。俺の婆ちゃんは五年前に亡くなっちまったから、その話を確かめようもねえが、確かにそんなような話を子どもの時分に聞いたよ」
 刹那、美咲は慄然とした想いに囚われた。
 まさか、あれは過去に山の上の庵に住んでいた老尼の亡霊だったのかと考える。ゾワリと寒気が身体中を駆けめぐり、膚が粟立つ。
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