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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第64章 十三夜の月 《壱》
 しかし、あの老尼からはそのような禍々しい気配や邪悪なものは一切感じられず、ただ清浄な光―清々しいほどの静謐さと幾星霜を穏やかに積み重ねてきた人だけが持つ達観、悟りのようなものを持っていた。
 あのような浄らかな気を纏う人が亡霊であったとは考えがたい。それに、何より、老尼と話した一刻(ひととき)、あの穏やかで深い声ややわらかな物腰、挙措の一つ一つが現実に体感したもののように記憶に灼きついている。
 あれが夢などであるはずがないと思う。
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