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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第11章 《巻の壱―予期せぬ災難―》
懸命に何か思い出そうとする。喉元に何か小さなものが引っかかっているようなもどかしさがある。泉水は何とかそれを引っぱり出そうとしてみるのだが、何も出てこない。
「駄目、思い出せない」
泉水は唇を噛んで首を振った。
「どうしてなのかしら、自分の名前どころか、どこに住んでいたかも判らないだなんて」
涙が溢れた。
「そのかんざしは俺が作ったものなんだ」
意外な言葉に、「え」と、泉水が眼を見開いた。