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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第11章 《巻の壱―予期せぬ災難―》
「いいえ、そんなことはありません」
「そっか。なら、それで決まりな」
 誠吉は嬉しげに言った。
 黄昏刻なのか、長屋の腰高障子が蜜色に染まっていた。遠くで、蝉の声が聞こえている。
 蜩だった。
 何故か、その鳴き声が物哀しげに聞こえる。折角親切にしてくれる誠吉に申し訳なくて、泣くまいとすればするほど、涙は次々に溢れてくる。
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