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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第12章 《巻の弐―待ち人―》
―誠兄ちゃん、もう、こんなことは止めようよ。
 そのひと言に、誠吉はハッと胸を衝かれた。
 その日、ぶつかったふりをして財布を奪ったのは、老婆であった。大店の隠居らしく、上物の着物を着ており、ぶつかってきた誠吉が盗みを働いたとも知らず、怪我はないかと心配してくれて、菓子までくれたのだ。
 優しげな老婆を騙したことに、誠吉は両親の呵責を憶えずにはいられなかった。
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