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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第12章 《巻の弐―待ち人―》
その時、突如として、泉水の心に閃いたものがあった。
あの人は、自分を探している人は、兄などではない。もしかしたら、惚れた男か、恋人だった男かもしれない。だからこそ、あの声を聞くと、無性に哀しくてやり切れなくなるのかもしれない。
泉水は布団を被り、声を殺して泣いた。
誠吉には言葉では言い尽くせない恩がある。瀕死の重傷を負った身を看病してくれた。泉水が助かったのも誠吉のお陰によるところが大きいだろう。