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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
「何か―思い出したのか?」
一緒に歓んでくれるとばかり思ったのに、誠吉の顔が心なしか、強ばっているように見えたのは気のせいだろうか。
「私、この簪を買ったんです」
そう、自分はこの玉簪を小間物屋の店先で見て、ひとめで気に入って買った。あの店は、確か、それほど大きな店ではなかった。大店ばかりが軒を連ねる中に挟まれるようにして建つ、小体な店だ。
それでも、大勢の若い娘や、中年の女が群がって、狭い店内は客で一杯だった。