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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
一つの記憶が蘇ると、後は次から次へと糸を手繰り寄せるように記憶が巻き戻され、幾つもの情景が順序立てて脳裏に浮かぶ。
泉水は眼を閉じて、ゆっくりとそれらの情景を反芻してゆく。
「あの事故に遭う少し前のことです。簪を買いました。小さな小間物屋で、店先に並んでいた品の中にあったと思います。ひとめで気に入って、ああ、良い細工だなと思いました。耳許で振ると、とても澄んだ小気味の良い音がして―。でも、あの店は、どこのお店だったんでしょうか」
泉水は眼を閉じて、ゆっくりとそれらの情景を反芻してゆく。
「あの事故に遭う少し前のことです。簪を買いました。小さな小間物屋で、店先に並んでいた品の中にあったと思います。ひとめで気に入って、ああ、良い細工だなと思いました。耳許で振ると、とても澄んだ小気味の良い音がして―。でも、あの店は、どこのお店だったんでしょうか」