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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
ちゃんとした名前がある。
愕きに眼を見開き、背後を振り返る。
「俺があれほど言っただろう、勝手に屋敷を一人で抜け出しちゃならねえって」
果てのない闇の中で、泉水はいつも一人ぼっちだった。でも、闇の彼方から自分を呼び続けてくれる人の声に励まされ、闇の中をいつ終わるとも知れぬ道を歩き続けた。
自分を呼ぶ人が誰なのか、その人の呼ぶ名は何なのか判らぬもどかしさに、何度も涙を流し、絶望に押し潰されそうになった。