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第15章 《巻の壱―幻―》

「子ども―、か」
　実際に口に出してみると、更に笑みが零れる。いつの日か、自分もあんな子を、可愛い子どもを泰雅との間に授かるのだろうか。
　祝言から一年、榊原家に仕える重臣を初め家臣一同が泉水の一日も早い懐妊を待ち侘びていることを知らぬわけではない。
　泰雅は夜毎、泉水の部屋を訪れるが、泉水にはまだ懐妊の兆はない。武門の家に跡取りは必要だ。