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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
 いや正確にいえば、十四歳で亡くなった祐次郎があのまま健やかで年月を重ねていれば、こんな風な青年になったであろう、そう思わせる容貌であった。色白で細面のその整った顔立ちは、まさに少年の日の祐次郎の面影を濃く宿している。泉水の中で、封印されていた懐かしい記憶が、想い出が次々に蘇る。
 たった一度だけ二人きりで親しく言葉を交わした早春のひととき。槙野の屋敷の庭には色鮮やかな真紅の椿が咲いていた―。急に降り出した雨、祐次郎に手を引かれて駆け込んだ四阿(あずまや)、二人して眺めた景色。
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