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Only you……
第8章 明 4
オレは麻都に愛されていないらしい。それはしょうがないか。今まで散々世話になって、迷惑かけて、その上愛してほしいなんて我侭なんだろう。でも嫌われているわけではないと思う――というよりは、思いたい。だからうざったいと思われても、縋っていたい。
最近の麻都は凄く不安定で、いつも何かを考え込んでいる。いつかは話してくれるのでは、と淡い期待を持ちつつ待っていたが、いつまで経ってもその気配はない。麻都は始終イライラしていた。オレはそんな麻都に“普通に接する”ことしかできなくて、日々悶々と生活していた。
そんな時に麻都がオレに怒りをぶつけた。驚いた。泣きそうな顔で拳を握り締めている麻都をみたから。
閉められたドアの前、中からは物音1つしない。本当に中には麻都がいるのだろうか。座り込んで耳をドアに当ててみる。麻都の溜息が時々聞こえてきた。不謹慎ながらもオレは安堵した。
何度呼んでも返事はなかった。それでもドアで遮られた向こう側に麻都がいると思うと安心して、うとうとしてきた。麻都の気配を感じながら、瞼を閉じた。目が覚めた時、隣には麻都がいてくれることを祈って……。
「ん……」
寝返りをうち、柔らかな何かが頬に触れたことに安心して、オレはまた眠りにつこうとした。
「……!!」
しかし、自分は麻都の仕事部屋前で眠っていたはずなことを思い出し、眠気は一気に吹き飛んだ。ガバッっと起き上がると辺りを見回す。そこは柔らかなベッドの上だった。ここまで1人で移動して来れたはずはない。オレは夢遊病者のように眠ったまま徘徊するような癖はないし、かといって初めからここで寝ていたわけもなかった。
そうなれば答えは1つしかないだろう。麻都がここまで運んでくれたのだ。
オレは1人、笑みを浮かべてみた。
ふと時間が気になり時計を探した。時刻は――なんと午後の4時だった。オレは一体何時間眠っていたというのだ。これでは完璧に病気だ。眠り病に違いない。
慌ててリビングに駆け込んだ。アルバイト先にも謝罪の電話を入れなきゃいけないし、夕飯の準備も全くしていない。それどころか食材の買い物もしていない。駆け込んでみて、オレはさらに驚いた。