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Only you……
第8章 明 4
「おはよう……」
麻都がいたのだ。てっきり会社に行くために部屋を出て、オレが転がっていて邪魔だから運んだのだと思っていた。
「どうした? そんな顔して」
麻都は苦笑いを浮かべたまま持っていた新聞をたたみ、オレの元へ歩み寄ってきた。オレはただ立ち尽くしてた。
「悪い!!」
突然麻都が深く腰を折り、頭(こうべ)を垂れた。オレは驚いて全くリアクションがとれずにいた。そのまま麻都の謝罪は続く。
「変なことに巻き込んでごめん」
「ちょっと、どうしたんだよ」
オレはいつまでも頭を下げさせていることがいたたまれなくて、オロオロとしていた。
麻都は顔を上げ、オレの目を直に見詰めて言った。
「明に辛く当たったりしないようにするから……」
オレはその言葉に落胆した。素でぶつかってくれることが、オレは頼りにされているようで嬉しかったのだから。それがもうしないようにするなんて、オレの存在価値が消えてしまったような気がした。
オレはそれを誤魔化すようにハハっと笑いソファの脇に置いておいた上着に手をかけた。
「と、とりあえずさ? 晩飯の材料買ってくる……」
この苦笑いを消してしまったら、オレはきっとマイナスの表情を浮かべてしまう。そうしたら麻都は、オレの心配をしてくれるんだろうか……。でもそれは、麻都を苦しめるだけにしかならないから。
「送るよ」
その一言で、一緒に出かけることが決定した。