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Only you……
第9章 麻都 5
「あーさーとー!!!!!!」

ベッドにうつ伏せで寝ていた俺を、明はごろんと転がした。その勢いに乗ってごろごろと転がり、ベッドから転げ落ちる。

「起きろ、コラ!! 遅刻すんだろ!?」

頬をぺちぺちと叩かれて、うっすらと目を開ける。

「んー……明、おはようのちゅーは?」

「うるさい。早く起きて来い」

抱きついていたのを引き剥がすと一蹴して寝室を出て行った。俺はのろのろ起き上がり、がしがし頭を掻きながら明の後を追った。


今日は結婚3年目の記念日だった。


「うわー!!! 初遅刻するー!!!!」

「だから言っただろ!! ほら、コレいるんだろ?」

慌てふためく俺に、明は冷静に書類の入った封筒を押し付けた。俺は毟るように受け取ると、玄関へ猛ダッシュ。

「あ、そうそう、りんさんが電話くれって」

「うぎゃー!! 透真に怒られるー!!!!」

服の乱れも直さずに、俺は玄関を飛び出した。


と、思ったが一端引き返す。

「行ってきますのちゅー」

すっかり油断していた明の唇を一瞬奪うと、もう一度猛ダッシュ。

「こ、コラー!!!!! 麻都っ!!」

後ろからは明の怒鳴り声が聞こえた。



俺たちはこれからも生きてゆく。そしていずれは死んでゆく。それでもいいんだ。それが自然なわけで、逆らうつもりもない。

それでいいんだ。

俺たちは何かを乗り越えて生きてゆく。

そうやって生きてゆく――。




―END―

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