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Only you……
第2章 明 1
ピーンポーン――。
玄関のチャイムが鳴る。オレはその音で目が覚めた。知らぬ間に、また眠っていたらしい。ドタドタと足音が響く。そして、叫び声……。
「麻都さん! 麻都さん!!」
女だ。それも結構若そうな。麻都の恋人かなんかか? それならオレは早々においとましなくてはならないだろう。
もぞもぞと体を動かしていると、突然ガチャッと扉が開けられた。オレは驚き、硬直した。
「あら? また逃げよとしてるの?」
女は平然と声をかけてきた。なぜオレに驚かない?
「ちゃんと寝てなきゃ駄目よ」
そう言って、女は部屋から出ていった。
なんだ? あの女。
仕方なく、もう一度ベッドへ戻ると、またドアが開いた。
「お粥。作ったよ」
麻都と、その後ろにはさっきの女。細くて背が高い、一般には美人と言われそうな顔立ち。薄い化粧は若さからくるのか。
麻都はれんげを使ってオレの口に粥を運ぶ。
「……」
「どう?」
期待に目を輝かせる麻都。
「……まずい」
とても食べられる代物ではなかった。なんの味もしない。ただ飯を水で煮ただけのそれは、もはや粥ではない。
横で女が溜息をついた。
「さては、なにも入れなかったのでしょう?」
「うっ……てか、なんか入れるもんなの?」
馬鹿だ。こいつ、粥も作れないのか?
「来て下さい! 私が教えます」
女はそう言うと、麻都を引っ張っていった。去り際にオレを振り向き、「ごめんなさいねー」と申し訳なさそうに言った。
オレはまた、眠りにつくことにした。