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Only you……
第4章 明 2
『バイバイ』
そんな言葉をやたらと明るい声でかけられる。そこは小さな公園のベンチの上。相手は若い綺麗な女だった。
僕は女を見上げたまま、手を伸ばす。すると女は怪訝な顔をして、僕の手を叩き落した。
『ウザイなぁ、ほんと。早く死んでよね』
僕は言葉の意味が理解できなかった。でも、ただ悲しくて。そこ取り残されることが悲しくて、わんわん泣いた。
『ばぁ~いばい』
そんな僕を見下ろして、満面の笑みでその場を去る女。
僕がいたのは、公園のベンチに置かれた、ダンボール箱のなかだった。
そして思った。確かに思った。
――行かないで! ママ。
「うわぁっ!!」
最悪の寝覚め。嫌な夢をみた。内容までは覚えていないが、嫌な夢だったのは間違いない。体はガタガタと震えていた。冷や汗が全身を包み込んでいる。
――ほんとに最悪……。
もう朝だった。時計を見ると5時を指している。隣を見たが、もう麻都はいなかった。というよりは、麻都がそこにいた感覚は全くなかった。冷たいベッド。
その上に一人ぼっちのオレはいた。