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Only you……
第5章 麻都 3
「明……好きだよ」
「うん、麻都ぉ」
唇で額に触れる。明の体がぴくりと反応した。
「怖い?」
明の前髪をかきあげながら尋ねる。明は小さく頷いた。
「麻都は、オレなんかのどこがいいの……?」
目を合わせないようにしながら明が問うた。
「こんな話、知ってる?」
「え?」
“どこ”という話をしなかったので、明は驚いたような声を上げた。
昔々、人間がまだ楽園に住んでいた頃、人間には頭が2つ手足が4本ずつついていました。みんな神様のもとで仲良く暮らしていました。
ところがある日、神様に禁じられていた“禁断の実”を人間は食べてしまいました。怒った神様は、人間の体を真っ二つに切り裂き、下界に落としてしまいました。
人間は苦しみました。半分しかない不完全な体での生活は、楽園での幸せな暮らしとは程遠かったのです。そこで人間たちは、自分の片割れを捜し始めました。再び1つに――完全な体になろうとしたのです。
「――その求め合うのが、愛とか恋なんだ」
俺は一気に離し終えた。そして最後に「これが俺の明を好きな理由」と付け加えた。
「オレが、麻都の片割れ……ってこと?」
「そっ。だから、どこがーとか、なんでーとかそんなのない」
明の頬に、ちゅっと口付けた。
明の肌が赤く色づいてゆく。
「いいのかな……」
俺の胸に顔をうずめたまま、明が言った。
「こんなに幸せになっても、オレ、許されるのかな……」
静かで、悲しげな言葉だった。それが明の闇なんだろうか。
「許すよ。俺が極上の幸せ、味あわせてやるよ」
明の唇は涙で濡れていて、ほんのり塩辛かった。そして柔らかくて、甘くて。